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草の根文化の苗床

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「ハチドリのしずく」の助け人

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 よろこびをますような環境運動ってどんなもの? それはどんなよろこび? 
こと環境問題のことを考えると、よろこびどころか、絶望してしまうようなことばかり。
放射能汚染、原発廃棄物と事故再発の可能性、それでも稼働をやめようとしない権力、気候変動、食の産業化。そんななかで、「よろこび!」なんていうと、抑圧して、カラ元気を振り起こす、嘘っぽい仕草になりかねない。
抑圧して、忘れよう、忘れようと心がけてるような心的要因があると、心の機能全体が鈍より麻痺してきて、感受性に乏しくなったり、創造力が減退したりするという。それがどんなに恐ろしいことでも、一番心配なこと、気がかりなこと、悲しいことを正面からしっかり見つめる勇気を持ちたい。

そうやって、これ以上落ちていかないような底を極めると、逆に、こころが安らかになって、安らぎから、じわじわ、行動力もめざめてくる。アメリカの環境活動家、ジョアンナ・メーシーも行ったように、「絶望こそが希望」なのだ。
そこから、新しい世界をコツコツつくるよろこびに満ちたアクションがはじまれば、って思う。でもそれは、あくまで、自分が一番気になる「絶望」をしっかり掴んで、そこから方向転換するアクションであってほしい。放射能汚染、廃棄物が心配だったら、発酵食品、自然栽培をして多様なバクテリアで体と土壌を満たそうとか、原発に代わる再生エネルギーをつくる、使うというふうに。そうでないと、「よろこび」は、単なる現実逃避になってしまう。

そこで一人一人ができることは、それこそ「ハチドリのひとしずく」。巨大な問題に対して、それぞれができることを精一杯やる・・・というかたちをとるかもしれない。

でも、必ずしも無力だと言えないんじゃないかというのも、ナウトピアの観点。実際、アクションがはじまり、新しい世界が少しずつでも目鼻立ちをあらわしていくと、いつも、思いがけない助け手が現れたり、思いがけない展開が待ち受けているからだ。

たとえば、私は今、北海道に住んでいて、冬の暖房には膨大なエネルギーがいる。だいたい石油を使うのだけど、石油利権がアラブ情勢を不穏にしたり、戦争の火種になってること、タンカーの事故の環境汚染、遠くの国からはるばる取り寄せていることの持つ不安要因(なんらかの理由で供給が途絶え、暖房できなくなったら死活問題だ)を考えると、問題あり。地元にふんだんにある木で暖房をまかなおうという結論に達した。で、薪ストーブとペレットストーブで家を温めることに。といっても、大変な作業で、苦労も多い。私一人はじめて、それでどうなるんだろう?とも思ったけれど、実際、薪を燃やしはじめると、家の住人や訪問者、炎の前に釘付けになる。美しさ、癒し、古代から人間が親しんできた光景を眺めている安心感、「やっぱり自然な暖かさが一番」などとつぶやいてる。エネルギー問題について、省エネについて、これ以上何にも言わなくても、体験を共有するだけで、みんなこれまでとは違った観点をもてるようになる。ゆらめく炎や、パチパチとはじける音、独特の臭い、体全体に広がる暖かさといったかたちで、火の神様、木の神様が助けてくれてる・・・そんな気がしたものだった。

都市の空き地に共同で野菜を植えて、食べ物を収穫していくコミュニティガーデンの運動も、動き出してみると、びっくりするほど、豊かな世界が生まれた運動の一つ。始まった当初はとにかく食を確保するためだった。昔は、食料不足そのものに対処するために、今は、見かけばかりの食料の豊かさの下、安心してたべれる食料がほとんどない問題に対処するために。

でも、実際にアクションがはじまると、そこにいろんな人がいろんな力、いろんなニーズを抱えて、加わってくる。虫や他の生き物、土壌微生物たちも、新環境に移り住み、自分の仕事をし始める。その結果、始めた当初は想像もしなかったほどのゆたかな世界が生まれ、生態系の回復、人間の健康の回復、食の文化の復興とか、コミュニティづくり、貧困、ドラッグ、犯罪の連鎖からの解放だとか、いろんな産物が、ごっそり収穫できるってことがわかった。

何より、コンクリートジャングルの中に突如出現した緑の園の光景自体が、道行く人に一番雄弁に、すべてを物語ってくれる。

計画通りにはなかなかいかないけれど、そうした協働がすすむたびに、テーマに深みと奥行きがでてくる。新しいタイプの人が参加しはじめ、パワフルな運動体になっていく。

全体が部分の足し算以上のものになる、そんなたくさんのシナジーをおこすためには、ここは「〜のための場所」といった特化した場所にせず、ゆる〜く構えるのがいい。来るもの拒まず、みんなの思惑が生きる開かれた活動の場をつくる。一見、些細で、人間的な物のなかに重要なこと含まれてるかも。

全体をコントロールして思ったことを計画通り達成するよろこびは諦める代わりに、意外な様々な出来事に開かれて、それを面白がるようなよろこびを大切にする。こうした世界をつくっていけるのだろう。

そうした協働、シナジーが降り積もり、その集大成として、出来上がった庭は、もう一つの世界。みんなが見たい世界の様々なパターンが、色とりどりの花のように咲いた「森」のようなもの。それが、「文化」と呼べるような、時空を超えて繁殖できる生態系になったとき、確実に世界が変わるって言えるんじゃないだろうか? 

そのためにはどんな態度が必要か、今、考えているところ。
by makikohorita | 2016-06-09 15:27 | 新しい世界をつくる!
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人を、社会を動かす文化発信力を鍛えるには? スピリチュアリティ、アート、アクティビズムなどについて、調査、実践してわかったこと、日々思うこと。


by 堀田 真紀子
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